2015年10月に消費税率が引き上げられる予定でしたが、2017年4月に先送りされた後、ついに2019年10月に8%から10%へと引き上げられました。
もちろん、不動産業界においても増税は無関係ではありません。
大きい金額が動く不動産の場合は消費税の額も比例して大きく、2%の差でも無視できるものではありません。
この記事では、そんな不動産売買における様々な課税についてご紹介いたします。

目次

土地は非課税、でも建物は課税?

増税によって不動産売買はどれくらいの影響を受けるのでしょうか。
消費税は、原則全ての物品やサービスの取引に対して課される税金のことを言いますが、消費税がかかる場合とかからない場合が様々に存在し、不動産に関しても消費税に関するルールは特殊であると言えるでしょう。

まず不動産売買において、土地の取引に関しては消費税はかかりません。
一方、建物は消費税の課税対象となります。
マンションや戸建てを売買する際は土地と建物を一緒に売買することになるため、土地については非課税、建物に対しては消費税がかかることになります。
不動産の売買では多くの場合、仲介業者を通じて行うため、成功報酬である仲介手数料が発生します。
この仲介手数料に関しては建物の売買だけでなく、土地の売買に対しても課税対象となるため、注意しましょう。

新築戸建で課税される消費税について

不動産売買の場合、土地は非課税で建物は課税対象であるとご紹介しましたが、具体的にはどのような計算になるのでしょうか。
新築戸建ての場合を例に、課税される消費税はどのようになるのか、具体例を見てみましょう。

一般的に新築戸建ての場合、売主は不動産会社であることがほとんどです。
そのため、不動産会社が売主とした場合を想定し、土地4,500万円、建物2,000万円の新築戸建ての場合の消費税を計算してみましょう。
土地は非課税ですが、建物は消費税が課されるため、消費税率10%で計算すると、2,000万円×10%=200万円がかかることになります。
総額としてみると、土地4,500万円、建物2,000万円、消費税200万円で合計6,700万円となり、「土地+建物の総額」に消費税がプラスされるわけではなく、あくまでも建物2,000万円にのみ消費税が加算される計算となります。

建物の消費税が課税されないケースもある

中には建物に課税されないケースもあり、結論から言うと、その物件の売主によって建物に消費税が課税されるかどうかが決まります。
売主には大きく分けて2種類存在し、それが課税事業者と個人です。
課税事業者とは消費税を納付する義務がある法人・個人事業主などで、こうした事業者が売主である場合は消費税が課せられます。

一方、売主が一般の個人であれば、消費税は非課税です。
マンションや戸建てでは、新築であるか中古であるかによって売主が異なる場合がほとんどでしょう。
新築物件の場合、売主の多くは不動産会社などの課税事業者になるため、新築の場合は消費税が課されると考えて問題ありません。
中古物件の場合では、売主が個人であれば消費税は発生せず、売主が課税事業者だと消費税が発生するため、同じ中古物件でも売主が個人だとメリットが大きいでしょう。

建物以外に課税されるもの

不動産売買における課税対象は建物だけではありません。
仲介手数料や銀行事務手数料、司法書士や土地家屋調査士の報酬などにも消費税が課税されます。
それぞれの費用の具体例を紹介しましょう。

銀行事務手数料は金融機関によって異なるものの、一般的に3万円ほどかかります。
司法書士手数料は司法書士事務所によりますが、登録免許税とは別におおむね10万円程度かかるでしょう。
手数料のうち、最も金額が大きいのが売買の取引に対する仲介手数料です。
売買価格が400万円を超える場合、「売買価格×3%+6万円」が上限金額として定められています。

では、6,500万円の新築戸建てを購入した場合の課税対象を計算してみましょう。
この場合、6,500万円×3%=195万円に6万円をプラスした201万円が仲介手数料となります。
これに司法書士手数料としておおむね10万円、銀行事務手数料として3万円で合計214万円、ここに10%の消費税分が加わり、合計235万4,000円がかかる計算です。

増税にも慌てない!売買にかかる費用を見極めることが大切

当たり前ですが、増税の有無に関わらず、不動産売買においてどういった費用が発生するのかを把握しておくことはとても大切です。
何に課税されるのか、また、実際にどれくらい金額が変わるのかなど、具体的な数字に当てはめて考えましょう。

さらに、売主が課税事業者なのか個人なのかも、課税に関わる大きなポイントです。
新築物件に関しては売主が課税事業者であることがほとんどのため、売主が個人の場合よりも価格が上がることが予想されます。
中古物件では、売主が個人の場合もあるため、増税の影響はそれほど受けないと考えられます。
いずれにせよ、増税という言葉だけに惑わされず、実際に売買にかかる費用を計算し、事前準備を入念に行った上で売買を見極めてみてはいかがでしょうか。