個人事業主や法人が事業承継で必要な資金とその調達方法とは?

新たに起業するとなると、登記費用をはじめとした開業資金が必要になってきますが、会社の経営権を承継する「事業承継」の場合はそれらの資金は必要ありません。
しかし、資金なしで事業承継ができるかというと、そういうわけでもありません。
この記事では、事業承継にどのような資金が必要となるか、また、その資金を調達するにはどのような方法があるかを解説いたします。
目次
事業承継に必要なお金とは?
一般的な事業承継するパターンは大きく分けて二通りあり、1つは経営者の親族間で行うケースと、もう1つは社内の役員や従業員で行うというケースです。
事業承継はいわば「会社を相続する」ということになり、それには税金を支払う義務が生じますが、経営承継円滑化法が適用されるため、負担の猶予措置が取られています。
この猶予措置はこれまで「発行株式の2/3までを対象に、相続税の80%(最大53%)を猶予」というものでしたが、平成30年に税制改正があり、それ以降は「発行株式の全てを対象に、相続税の100%を猶予」という制度に変わりました。
また、相続・贈与の対象範囲も「一人の経営者から一人の後継者」というものが「複数の株主から複数の後継者」まで広がりました。
これにより、改正前よりも円滑に事業承継を行うことができるようになり、後継者への負担が緩和されました。
この点では、改正前ほどの資金は必要なくなったものの、事業運営はそれだけに限らず様々な資金が必要となり、事業承継で生じる直接的なものではなくても、余裕を持った資金を用意しておく必要があります。
もちろん、会社の規模に応じてその資金は異なりますが、事業承継後の運転資金などもあらかじめ考えておかなければならず、中小企業の場合でも最低数百万円はかかると考えておいた方がいいでしょう。
事業承継を行う際に大切なこと
「現経営者」目線で考えた場合
現経営者であれば、現在の売上高や従業員数などはすでに把握していると思いますので、それらを総合的に判断して、相続する後継者になるべく負担がかからない形で事業承継を行うことが望ましいです。
例えば、もし人員不足が予想される場合は相続後の事業運営を円滑にするためにも採用を強化するといった対策を行うなど、事業承継による人員の変動や資産額、キャッシュフローまでをあらかじめ考慮しておく必要があります。
正確に会社の現状を把握できなければ、事業承継のタイミングで従業員数や資産が少なくなるなど、相続してすぐに後継者に重い負担がのしかかる恐れがあります。
少し極端な言い方かもしれませんが、これまで大事に育ててきた会社と従業員を次の後継者に相続することになりますので、それだけ慎重に計画を立て、事業承継後もスムーズに事業を進められるように経営資源や営業利益といった点からも様々なリスクに備えておきましょう。
「後継者」目線で考えた場合
後継者として会社を相続する場合、あらかじめ業績や資産、経営者の保有資産に至るまでを把握することはもちろん、将来的な可能性についても分析することで、実際の価値がより正確に見えてきます。
例えば、取得している特許や高い技術を持つ従業員なども会社の重要な資産です。
もちろん、マイナスになり得る要素についても、漏れがないように調査しなければなりません。
これらの必要な情報をすべて集めたら、会社の正確な価値を判断し、次に経営計画を立てていきます。
実際に経営者が変わるとなると、多少のリスクが発生することも考えておかなければなりません。
事業承継は従業員の反発が出ることもあるため、社内体制の見直しが必要になる場合が出てきます。
また、時代のニーズに合った新たな戦略が求められることもあるでしょう。
これらの事情も考慮した上で、事業承継の際に発生する資金を洗い出し、その資金を調達する方法まで検討しておきましょう。
資金を調達する方法は?
資金調達の際、できるだけ希望額を満たした形で融資を受けられるかが重要になってきます。
当然、十分な資金が用意できないと、それだけ計画の実行が難しくなりますので、その条件を満たすためにも、実際に取引のある銀行に相談してみるのもいいでしょう。
銀行からの借り入れの場合、経営に関する相談をすることも可能です。
ただし、事業性の融資に力を入れている銀行であることが好ましい条件といえます。
しかし、資金の規模によっては必ずしも十分な感触が得られるとは限りません。
そんな時は「日本政策金融公庫」という選択肢もあります。
日本政策金融公庫のメリットは利率が低いことで、一度融資を受けることができれば、その後も追加融資が受けやすくなるのも特徴です。
また、事業者が利用できる融資が多いのも特徴で、「事業承継・集約・活性化支援資金」といった事業承継に合った融資も用意されています。
ただし、それだけ審査は厳しい傾向が見られ、初めての利用にはハードルが高いかもしれません。
日本政策金融公庫は無担保での融資が可能ですが、その分、会社の将来性に目を向けるため、事業計画書についての厳しい質問がされる場面もあります。
事業承継の資金調達は不動産担保ローンがおすすめ
事業承継を実行する際、思わぬ資金が必要になることも想定しておいた方がいいでしょう。
たとえ事業計画を綿密に立てていても、災害や株価の変動、取引先の事情などによって経営に影響が出たり、新たな資金が必要となるケースも出てきます。
しかし、事業継承の名目だけで資金調達をしてしまうと、それ以外の目的で使うことができません。
いつでも柔軟な使い方ができる資金の確保は、事業運営にとってはとても重要なポイントとなり、個人事業主が事業承継によって法人に変わる場合も同じことがいえます。
事業承継で会社をスムーズに経営していく上で好ましいのは、使い道に縛られない資金調達をしておくことです。
その点でいえば、ノンバンクの不動産を担保とした有担保ローンの場合は資金使途が自由なものが多く、もし急に資金が必要になった時でもその中で使うことができます。
事業承継の際、建物や土地などを同時に取得することが多いため、その不動産を担保に「不動産担保ローン」で資金調達しておくと、様々な場面で融通を利かせやすく、事業承継の資金調達に向いているでしょう。
事業承継は必要な資金と使途まで見通しを持つことが大切
事業承継で新たな事業を始める場合、強みになるのは資金力です。
しかし、そのためには縛りがなく柔軟に利用できる資金でなければなりません。
政府系の金融機関は利率が低く、無担保での利用が可能ですが、その分1回の融資に対して使い道が限定されてしまいます。
事業承継は実際に経営権を得てからも、様々な場面で資金が必要となることが多いです。
実際に必要な資金を上手に調達した上で、計画的に事業継承を行い、その後の事業運営も円滑に行える見通しを持つことが大切です。
この記事の監修者
- 株式会社ビジネスクルー
- 代表取締役 浅山 亮二
- 2007年10月に株式会社ビジネスクルーを設立。
近畿一円を中心に、個人向け・事業者向け・不動産業者向けに不動産を担保とする融資サービスを提供。
貸金業務取扱主任者及び宅地建物取引士の資格を保有。