「任意売却物件」は築年数が比較的浅い状態でも大幅に値下げされ、時には中古物件よりも低価格で購入可能なことがあります。
しかし、低価格で不動産を購入できるからというメリットだけで購入を急ぐことはできません。
一般的な物件に比べて価格を下げている理由は購入者がつきやすいといったメリットだけではなく、さまざまなトラブルを招く恐れのあるデメリットもあるからです。

こちらの記事では、任意売却物件の購入を検討されている不動産業者の方に向け、トラブルを回避するべき点を踏まえつつ、購入までのメリット・デメリットを含めたポイント3つについて解説していきます。
お得な任意売却物件の購入を安全に執り行うための参考にしてください。

目次

任意売却物件とは何かを理解しておく

不動産を購入する際にはローンを組むことが一般的ですが、やむを得ない事情でローンを払い続けることが困難になることがあります。
金融機関では、このような方に対して、仲介業者を通して物件を「任意売却」する手続きを推奨しています。
裁判所での手続きを経て、対象の不動産が競売にかけられるというケースもありますが、その場合は通常よりも不動産価値が低くなったり、不動産引渡し時期の調整が難しくなったりなど、デメリットが多く発生しがちです。

そんな中、「任意売却」はあくまでも通常の不動産取引として一般市場で売却されるため、競売よりも高く売却できる見込みがあり、結果的に残りの債務をより縮小することに繋がります。
つまり、「任意売却物件」とはローンの返済が困難な不動産所有者が債務の返済のために仲介業者を通して売却する物件のことを指します。

出典:住宅金融支援機構「融資住宅等の任意売却

任意売却物件の購入のメリット

任意売却物件を購入するにあたり、一般的な不動産売買と異なる点がいくつかあります。
まずは、不動産業者が「買取」を行う場合、築浅の物件でも交渉次第では比較的安価に購入できるメリットに繋がることです。
うまく探すことができれば、状態の良い物件を市場価格より10%〜20%程安く購入できます。
次に、購入の際に市場価格よりも安く手に入れているため、あらかじめメンテナンス等をかけておくことで物件自体の価値を担保でき、出口戦略として購入時よりも高く売れる有利なメリットもあります。

ただし、任意売却自体は通常の買取と同じ取引だとしても、任意売却に特化した業者でなければ、そもそも任意売却物件を探すことができないため、そのような取引をすることは難しいです。
しかし、次項のようなケースでは取引に繋がる可能性もあるので、一般の不動産業者でも利益を見込める機会に繋げることができるでしょう。

不動産業者が通常の買取を行えるケース

市場価格が3,000万円の物件を金融機関から融資を受けて購入したケースを例にご説明します。
引き渡し後は月々の返済が始まりますが、とある事情により残債務が2,600万円ある状態で返済が滞ってしまい、督促状が届きながらも支払いができずに6ヶ月以上遅延したとします。
こういった場合、「期限の利益」が失われてしまうため、金融機関はローンの残額を一括で返済することを要求してきます。
ここで話し合いによって任意売却に進むのか、もしくは裁判所を通して強制的に売却する不動産競売へ進むのかの段階となります。

上記の2パターンでは任意売却へ進むことがほとんどですが、どうしても話し合いができずに不動産競売に進んでしまうことがあります。
任意売却とは違い、不動産競売には強制力があるだけでなく、価格は市場価格の70%~80%(2,100万円~2,400万円)ほどになるため、売却代金を返済に充てても債務が多く残ってしまうことになります。
競売は強制力があるため、開札が始まってからではどうすることもできませんが、もし債務者がその前段階で「やはり話し合いに応じる」ということができれば、通常の買取業者を探すことになりますので、市場価格の80%~90%(2,400万円~2,700万円)ほどでの買取が見込めます。
とはいっても、競売手続きが進んでしまっている最中なのであまり時間の猶予はなく、所有者も競売開札前に買取業者を見付ける必要があるため、業者側もタイミング良くそういったケースに直面した場合にはこのような取引に繋げることができるでしょう。

稀なケースにはなりますが、不動産業者側で抵当権の抹消について金融機関と交渉ができれば、通常の買取以上の取引も可能なため、リフォームをして再販することで高値での売却ができるなど、利益が見込める取引を行うことができます。

任意売却物件の購入のデメリット

任意売却物件の購入についてのデメリットの一つに、2020年4月「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に改正された用語についての解説が必要です。
これは端的にいえば、傷物や欠陥品と理解していながら、そのことを隠して相手に売却した場合「契約不適合」であるとされ、契約を解除できる民法です。
一般的な不動産売買においては、売主側に契約不適合責任を負う義務があります。
しかし、残念ながら任意売却物件においては、この契約不適合責任が免責となります。
ですから、契約を進めてから不動産の欠陥に気づいても、買い手自身で修理などを請け負うことになります。
また、売主が不用品などを放置していているケースもあります。
この不用品の所有権は売主にあるため、安易に処理などをすると訴えられる危険性もあります。契約前にはこの点にも注意しましょう。

出典:国民生活センター「瑕疵担保責任とは

まとめ

任意売却物件は、購入にあたって比較的低価格で購入できることや、新しい物件でも大幅な値引きが期待できることもあり、魅力的なメリットがあります。
ただ「少しでも高く売りたい売主」と「少しでも安く買いたい不動産業者」での売買交渉には時間がかかる側面もあります。
また、任意売却物件はあくまで任意売却に特化した不動産業者でないと探すことができないなどの注意点もあるため、一般の不動産業者では取引ができません。
しかし、場合によっては通常の買取となるケースも見込めますので、その際は所有者や金融機関との交渉を上手く行い、お互いにメリットのある取引を行うと良いでしょう。
先述したように売主の免責などを悪用するケースも存在するため、面倒なトラブルを招かないためにも慎重に進めていくことをおすすめします。